382.ベニの博物館[エッセイ](10/01 02:26)


口紅。女性がお化粧するときに必ず使うアイテムの筆頭にあがるのではないでしょうか。

寝坊しちゃったなんて時にも、とにかく眉毛と口紅さえ使えば、
「なんとか外にでかけられる顔になるわ」
なんてこともありますよね。
きっちりラインをとって口紅をさせば、顔色もよく見えますし、顔の印象はぐっとひきしまります。

現代では、季節ごとに新しい色を手に入れるぐらい手軽に求められる口紅ですが、 江戸時代はとても高価で貴重なものとされてきました。
今のようなリップスティックタイプのものはもちろんなくて、紅用の器に入れて売られていたんですね。
おちょこの内側にベニを塗って乾かしたものを、少しずつ使っていたようです。
薬指は別名「ベニさし指」ともいうように、指を少しぬらして乾いたベニを溶かし、唇にそっとおいていたんです。
今と同じようにベニ筆もちゃんとありました。
このベニを口紅だけでなく、頬紅として、またまぶたの上に少し乗せてアイシャドウとしても使ったようです。
女性の顔は紅色があればきれいに見えるということでしょうか?

東京の神保町にはベニの博物館というのがあります。
ベニの歴史が分かり易く展示されているんですが、オフィス街が近いという場所柄か、訪れる人には意外と男性が多いんですね。

ここで、江戸時代の人が使ったのと同じタイプの、紅をつけてもらいました。
ほんのり唇が染まってかわいらしい感じ。今の口紅のように簡単に発色するわけではありません。
でも、何度も重ねれば濃い赤に仕上げられるということで、塗り方で色を加減したようです。
きっと時間をかけてじっくり丁寧に紅をさしていったのでしょう。
これから会う人のことを思いながらね。
少しの色でおしゃれをする、昔の人の気分を味わった午後でした。

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